安全に対してどう取り組むべきか-「安全と安心の科学」

安全と安心の科学 (集英社新書)

安全と安心の科学 (集英社新書)



本書を読み終えたまさにそのころ、ニューヨークで旅客機墜落事故が起きた。
アメリカでは、死傷者の出る航空機事故は2年半ぶりのことだそうで、50人もの犠牲者が出たことに非常な衝撃を受けているようだ。

これだけ、「安全」ということが一般的になり、安全対策に力が注がれるようになってさえ、規模を問わず事故、災害が起こるのはなぜだろう。

果たして、「安全」な世の中になってきているのだろうか。

本書を読む限りは絶対安全などということは土台無理なことであると思い知らされる。

人間そのものが危機を生み出し、人間の営みが危険を増大する。
また、いくら安全対策万全のシステムや機器でも、それを作ったり、使ったりするのが人間である以上絶対安全は保証されない。

人間にとっての「安全」は、逆説的に言えば人間がいる限り脅かされるものであるのだ。


本書は、早くから安全学を提唱した著者が、安全とはどう考えるべきか、実際の事例、安全への取り組みなど、幅広い視点で概観している。

序論 「安全学」の試み
第1章 交通と安全―事故の「責任追及」と「原因究明」

第2章 医療と安全―インシデント情報の開示と事故情報
第3章 原子力と安全―過ちに学ぶ「安全文化」の確立
第4章 安全の設計―リスクの認知とリスク・マネジメント
第5章 安全の戦略―ヒューマン・エラーに対する安全戦略

特に、本書では、「安全」というどちらかというと数値的、客観的に捕らえられる事象とあわせて、「安心」という非常に個別で主観的な感情との2つの軸で考える必要があることを説き、人間との関わりの視点を持つことの重要性を教えてくれる。



同じニューヨークで立て続けに起きた二つの航空機事故。一方は河川に不時着し被害ゼロで一方は民家に墜落した。
この違いは何だったのだろうか。単にパイロットの腕というだけではない事故背景の分析が待たれるところだ。




安全学

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科学技術のリスク―原子力・電磁波・化学物質・高速交通

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